羽越本線

2004年8月5日に羽越本線に完乗している。以下はそのメモである。

羽越本線は新津〜秋田間271.7kmを結ぶ。ここに酒田〜酒田港間の2.7kmを加えるのが正式ではあるが、それは貨物線なので旅客で乗りようがない。この日は新津から秋田へ日本海側を延々と北上した。

4時51分、ムーンライトえちご号が新潟駅着。新津には4時37分に着いているのだが、私が乗ることになる新津の始発電車は6時19分発で、そこで降りても手持ち無沙汰である。それにムーンライトえちごの車内では眠れず、身体がだるかったので、新潟までシートに身体をゆだねたのであった。新潟駅近くのローソンで朝食を買い、駅に戻る。新潟からは5時18分発。2両編成で先頭側に乗る。クモハ115-1561。おばちゃんがたがおしゃべりに夢中である。新潟から2つ先の亀田とその次の荻川の間で検札があった。といって短い区間であるから、後ろの車両だけ。いい加減といえばいい加減な話ではある。新津着、5時36分。次の列車までまだ40分もある。

新津まで戻ったのは、もちろん未乗区間を片付けるためである。ムーンライトえちごに乗って新潟から北に乗り継ぐ場合は、ふつう、新潟駅4時57分発、白新線経由の「快速」に乗る。村上には5時50分着。5時59分の各駅停車に乗り継いで、酒田に8時18分着。そこまでは接続が大変よいのだが、今回の私の第一目的地は秋田である。酒田での乗り継ぎは接続が悪く、9時38分まで待たねばならない。結局これに乗ることになるのであれば、新津発6時19分で酒田着9時30分の各駅停車でも間に合うのである。

新津発6時19分の列車は、2両編成の気動車である。全線電化の羽越本線になぜわざわざ気動車を走らせるのかと疑問に思っていた。車掌をつかまえて聞いてみようかとも思っていたが、とうとう機会は得られなかった。今から考えてみれば、自分が持ち合わせている知識でも分かる。村上にデッドセクションがあるからである。だったら、交直流対応の電車にすれば、と考えてしまう私は、ちとあまいのだろう。気動車の方が安くつくという計算が背後にあるのだろう。

ともかくも、列車はスタートした。車内にはテニス部であったかの部活動部員の高校生男女が目立つ。朝早いのにご苦労なことであるが、この高校生らのおかげで列車は満杯である。私は早めに着いていて席は確保してあった。とはいえ、ここで失敗をする。確保した席は後ろ向きであった。新津の駅名標はおもしろく、どちらに向かうにも二股に分かれている。信越線が通り、また、磐越西線羽越線が出ているからだが、それを見ていて席の方向に失敗するあたり、やはり寝不足というものである。満員の車内で、数駅がまんすることになる。

車窓に流れるのは田園風景、このあたりは単線区間である。観察を怠っていたが、単線区間新発田までで、新発田金塚間が複線、また単線に戻り、中条〜平林間で複線。「平林から単線」というのはメモしてあったが、村上〜間島間で複線となったのには、気が付かなかった。このあたり複線区間だが、下り線のみが海岸線沿いを走り、上り線は長く掘ったトンネルを抜けてしまうのである。村上を過ぎて先の短いトンネル出ると、右側に明るい日本海が開けた。パッと目に入ってくるその様は、キラキラひかっていてやはり海とは美しいと思わせる。線路は右にカーブして日本海は左に移った。乗り合わせた若い女性のグループ旅行の客が「日本海は夕陽、朝日は太平洋」と言った。ひとり旅と思しきやはり若い女性は、むかしながらの銀塩一眼レフをかまえて写真を撮っている。

羽越本線というのは、もともと単線で建設されたが、複線化を全線について行ったわけではなく、とびとびに行っている。ダイヤグラムを組む上でそれが合理的だからだが、下り線は海岸沿い、上り線はトンネルと、離れたり近づいたり、という絡み合いが見ていておもしろい。

単線、複線の話はそれぐらいにして、件の高校生たちであるが、新津に始まりいろんな駅で乗り込みこの列車に集合した末、新発田の3つ先、中条で全員降りた。そこで試合でもあるのか、合宿なのか、であろう。ともあれ、列車は想定外に多くのお客を乗せていたと見え、中条の時点で5分遅発であった。

列車が遅れたときというのは、失礼ながら、おもしろい。この遅れは取り戻されるのか、それとも終着までそのままなのか。私の事情としては、酒田で乗り換えに8分あるから、5分ぐらいは遅れてもいいが、単線であるからして、列車の行き違いに手間取れば、遅れはふくらむかもしれない。坂町では4分遅れとアナウンスが入った。着実にリカバリしている。今川で「いなほ」とすれ違った。ここで、定刻発車となった。列車のスピードを上げていたのか、駅の停車時間を縮めていたのか、いずれにせよ、よくやったと思った。

あとは落穂拾い的に記す。高校生はうるさかった。私は眠ろうと思っていたが、寝付けなかった。高校生がいなくなって、車掌も余裕ができたのか、中条〜坂町で2番目だけ検札があった。越後早川を過ぎて、左手に謎の島が見えた。帰宅後調べると、粟島というらしい。こぶりに見えたが、ひとが住む大きな島だ。何も見えない海より、島影が1つでもポツンとあったほうが、落ち着く。

酒田では、跨線橋をこえて、3両編成の電車に乗車。クモハ701-2。酒田〜秋田間については、メモも記憶もない。ぐっすり寝ていたようだ。11時31分、秋田着。竿燈祭りで賑わう秋田である。思えば、秋田県は未踏であったから、これで東北6県制覇したことになる。羽越本線も一気に完乗した。